三国志 〜生と死と心〜

原作 羅貫中『三国志演義』 作・絵 彩ますみ

     【29】 関羽と藍泰

次の日の朝。
藍泰の家では、寝床で未だに藍泰が寝ていた。
彼の母親が、藍泰に起きるように促す。

「光生! 起きなさい。遅刻してしまうよ!」
「あ〜い……。ふわぁ〜……。ねみぃ〜」

藍泰は、だるそうに大きくあくびした。
「朝なんて大嫌いだ。かったりーなぁ……」
「初日からそんなこと言ったら、関羽先生に叱られるよ!」
「はいはい、分かったよ〜、行きゃーいいんだろ?」

藍泰は、家を出て、ぶつぶつと呟きながら、道端を歩く。
「あの髭ぼうぼうのおばけが、俺の先公……。関羽雲長って名前。やたらでけえやつで、なんかおっかねーやつ……俺の調子を狂わせやがる」
藍泰は、昨日初めて会った、関羽の瞳を脳裏に浮かべてしまった。

「おまけに、やつの義弟とやら……張飛ってあの虎髭ぼうぼう男も、なんか馬が合わなそーだし……」
藍泰は、張飛のことまで思い出した。
「……あんなやつらとまともに戦っても、多分勝ち目はねーじゃん……!」
さすがの藍泰も、それは分かっていた。
「……まず図体違い過ぎるし……反則だぜ……。あんなごっついやつらが二人も……」

「だーっ!!」
藍泰は、全て断ち切りたいとばかりに、頭をグシャグシャ掻いた。
「やってらんねー! なら行かなきゃいーんだ」
藍泰は、関羽の塾とは違う方向に走った。
「あんなやつらのいる塾なんか行かねーぜ。サボってやるかんな!」
藍泰は、どんどん走った。

「……」
原っぱまでやって来た藍泰は、少し息を切らしていた。
「ここまで来りゃー、大丈夫だろ」
藍泰は、乱暴に原っぱに寝転がる。

「……」
空には、見事な青空と、白い雲が浮かぶ。
藍泰は、思いっきり、伸びをした。
「うーん!」
そして、原っぱに寝転び、ゆっくりくつろぐ。
「ああ……いい気持ちだぜ……」
藍泰は、なんだか眠くなってきた。
「大体、こんないい天気に、教室になんか閉じこもってる柄じゃねーんだよ……」

「しっかし、今日はどーしよーかな」
藍泰は、突然勝手に、塾を自主休校にしてしまったため、予定を考えていた。
「朱政とでも遊ぼっかな……」

しかし……。
その時、藍泰の頭上から、低い声が降ってきた。
「なにをしておる」
「!?」
藍泰は、ギョッとして目を見開いた。

寝転がっている藍泰の視界に、やたら長身で身体が大きく、髭がとても長い男が、自分を見下ろす様子が飛び込んできたのだ。
もちろん、それは関羽であった。
「見付けたぞ! 藍泰!」
「げっ!?」
藍泰は、思わずガバッと飛び起きた。

関羽は、厳しい目で、藍泰を見下ろしていた。
「なにが『げっ』なのだ、失礼な……」
関羽は、腕を組み、厳しい表情で続ける。
「お主、先日あれほど申したと言うに、初日から授業に来ないとは、よい度胸であるな。もうとっくに授業は始まっておるぞ!」
すぐ傍に、関羽がいるため、藍泰は身構えた。
「なんで俺の居場所が分かったんだよっ!?」
「なんとなくだ」
「な、なんとなくぅ!?」
藍泰は絶句した。
「……し、神出鬼没なやつめっ……」
「師である以上、教え子の行動ぐらいは読めねばならん……」
「……!」
藍泰は、悔しそうに顔を歪ませた。

しかし藍泰は、少し考え、突然、関羽の後ろを指差した。
「ああっ!!」
「むっ!?」
関羽が、後ろを振り返り、一瞬藍泰から目を離した隙に、藍泰はニヤリと笑った。
「へへんだ、バカめっ!」
「なにっ!?」
「それっ!!」
藍泰は、関羽を飛び越え、思いっ切り宙返りをした。
「……宙返り……!?」
関羽は、細く鋭い目を見開き、驚いた。

「逃げるが勝ちだっ! あばよっ!!」
藍泰は、全速力で走って逃げ出した。

残された関羽は、少し感心していた。
「ほう……宙返りとな。あれほど身軽とは、なかなかやりおるわ」
しかし、関羽は、不敵に笑った。
「しかし、このわしからは逃げられんぞ!」
関羽も、全速力で藍泰を追った。
「!?」
藍泰はびっくりしていた。
関羽はとにかく足が長く、身体が大きい割りには素早かった。

逃げた藍泰は、無我夢中で、竹林の中に入り込んだ。
「そうだっ、竹に登っちまえばいーんだ。やつはでか過ぎて竹には登れねえ……!」
藍泰は、関羽が来ないうちに、素早く竹に登った。
その竹は、幹が太めだったため、藍泰が十分登ることができた。

そして、少し経って、藍泰のいる竹林に、関羽が駆け込んで来た。
関羽は、周りを見回す。
「ぬう……何処に行きおった、あやつは……むっ!」
関羽は、人の気配を敏感に感じ、上を向いた。
「……!」
竹の上の藍泰は、ギクッとした。

関羽は、藍泰を見上げて叫んだ。
「藍泰。観念し、降りてくるのだ! そうすれば、許してやろうぞ」
「嫌だっ!」
藍泰は突っ張った。
「さあ、わしと塾に来るがよい。大人しくせねば、後が怖いぞ!」
「嫌だねっ! 誰が塾なんか行くかよっ! どーしてもって言うんなら、力づくでも俺を連れて行けば?」
「なに……?」
関羽は、目を鋭く細めて、眉間にしわを寄せ、眉をピクリと動かした。
「けど、あんたじゃ、竹が折れちまうぜ。ざまぁ見ろ!」
藍泰は、馬鹿にするように笑っていた。

ところが、関羽は、うろたえることなどなく、余裕の表情であった。
「愚か者め……。ならば、竹に掴まっておるがいい。振り落とされたくなければな!」
関羽は、竹の幹を片手で掴み、激しく揺さぶった。
「なっ……!?」
関羽は、強気な顔で不敵に笑う。
「どうだ、藍泰よ。観念せよ!」
「くうっ……!!」
藍泰は、激しい振動の中、竹にしっかりしがみつき、耐えていた。
「せいぜい、振り落とされぬようにな!」
関羽は、まだ、全く本当の力を出していないようであった。

このままでは、関羽の振動で、振り落とされてしまう。
それどころか、関羽の凄まじい腕力だと、竹を折ってしまいかねない。
「ダメだっ……」
関羽の腕力による揺れが、激しくなってきたので、藍泰は竹からまた遠くに飛び降りて逃げ出した。

「逃げろっ!!」
「ぬう……なかなかやりおる。まるで猿だ……」
そう呟いた関羽は、藍泰を追いかけた。
関羽の足の速さは、かなりのものだった。
「藍泰! 待たれよ!!」
「な、まだ追って来る! ……しっつけーやつ……!」
藍泰は、後ろから迫り来る関羽に、ギョッとしていた。

その時だった。
「うわあっ!!」
藍泰は、走っている道にあった石に気が付かず、その石につまずいて、転んでしまった。
「くーっ……、いってえ……!」
少し足と腕を、擦りむいてしまったようだ。
患部がとても痛かった藍泰だったが、今は、摩っている場合ではない。
とにかく、逃げなければ、関羽に捕まってしまう……。

しかし、転んだことで、ますます藍泰は不利になった。
「藍泰、待て!!」
「ううっ……!」
関羽が、どんどん後ろから迫って来る。
「ヤバい……お、追い付かれる……!」

関羽は、あっという間に、リーチが長い腕を伸ばし、藍泰の左腕をがっしり掴んだ。
「捕まえたぞ、藍泰!」
「やっぱりっ……!!」
「さあ、もう逃げられんぞ、観念せよ!」
「く……くそーっ……」
「なかなか元気な子供ぞ。しかし、元気が過ぎるようだ。これは、たっぷり絞らねばなるまいな!」
「ちっ、ちっきしょー……!」
関羽に左腕を掴まれ、動きが取れない藍泰だったが、関羽の身体の一部が、目の前に垂れていることに気付いた。
「!」
そう、関羽のあの長い髭であった。

藍泰は、その瞬間、右手に力を込め、関羽の髭に狙いを定めた。
「……バッカみてーに……」
「!?」
「なげー髭伸ばしやがってーっ!!」
藍泰は、関羽の髭を引っ張ろうとして、右手を乱暴に突き出した。

しかし、関羽は、藍泰の右手首をがっしり掴んだ。
「愚かな……。わしの髭を引っ張る魂胆でおったな。だが、髭を引っ張る隙など、お主に与えはせんぞ!」
「な、なんであんた、そんなに隙がねーの……!?」
「お主の瞳が、全てを教えてくれておる。お主がこれから、どのような行動をとるかをな」
「くっ、くそっ! そんな髭伸ばしやがって……!」
「なにを言われても構わぬが、言うだけ言うておく。……わしの髭は、わしのものであり、わしのものではない。この髭は心友の形見ぞ……」
「へっ……?」
こんな状況でも、穏やかで深い、関羽の瞳に、藍泰はかなり動揺していた。
関羽の瞳は、真っ直ぐ、藍泰だけを見ている。

しかし藍泰は、関羽を鋭い瞳できっと睨み付けて怒鳴った。
「んなこたー、どーでもいーんだよっ! 離せっ! 離せよバッキャロー!!」
「力づくでも連れて行けと申したのは、お主であろうが。むんっ!」
関羽は、軽々と藍泰を抱き上げ、自分の肩に担ぎ上げた。

ところが、関羽は、藍泰が怪我をしていることに気が付いた。
「……お主、怪我をしておるではないか」
「……ああ、これね……」
「先程負った怪我か?」
「……そーだよっ。石につまずいて転んじまった」
「そうであったか」
「あんたが追ってくるから、それどころじゃなかったけど」
「そうか……」
関羽は、苦笑していた。

関羽は、藍泰を担ぎ上げ、塾に連れ帰ってきた。
自分の邸宅の書斎に入った関羽は、藍泰の傷を見て、静かに言った。
「その怪我を、手当てせねばなるまいな……」
「ええ? こんなもん、唾付けときゃ治るよ」
「確かに、軽い擦り傷ではあるが、油断すれば、雑菌が入ることもあるぞ。取り敢えず見せてみろ」
「はあ? いいよ別に……いてっ!」
「痛むか? ならばそこへ座れ」
「ええ? あんた、怪我の手当てなんてするの!?」
「ああ、するぞ」
「とても、そんな顔には見えねーけど……」
「顔で判断するでないぞ。ほれ、騙されたと思うて、じっとしておれ。わしはこれでも、薬の知識と看護には精通しておるのだ」
「……つーか、騙されちゃ困んだけど?」
「ははは……。大丈夫だ。わしは、人の怪我の手当ては得意なのだということだ……」

関羽は、藍泰を椅子に座らせた。
藍泰は、怪訝な顔つきで、関羽を見る。
「……俺、あんたに逆らったのに、なんで手当てなんか……」
「それとこれとは、話が別だ」
関羽は、藍泰の傷口に、薬草の新芽を煎じた液を塗った。
「くっ……」
「染みるだろうが、我慢せよ」
藍泰は思わず、顔をしかめた。
「まあ、この怪我は自業自得だがな……」
関羽は、優しい顔で苦笑していた。
「お主の素早い身のこなし、とくと見せて頂いた。だがあの程度では、このわしには敵わぬぞ」
「もういい、分かったよ、よく分かった……。ちぇっ……」

逆らって迷惑をかけた相手に、傷の手当をされてしまった藍泰。
とても変な気分であったが、さすがに何も言わないわけにはいかなかった。
藍泰は、関羽に頭を下げて、お礼を言った。
「……なんっつーか……。その……、ありがとな……」
「うむ……」
関羽は優しい顔でうなずいた。

関羽に怪我の手当てをしてもらった藍泰は、書斎を出て行こうとしたが……。
「待たれよ、藍泰!」
「え? まだあんの?」
「当然だ。あれほど、今日塾に来いと申したと言うのに、お主はすっぽかした。わしとの約束を破った過ちは大きいぞ!」
「ええ〜!?」
関羽は、今度は厳しい目付きで、藍泰を見下ろす。

「罰として、教室と廊下、準備室の掃除をせよ。その後は厠所もだぞ!」
「はぁ!? なんでそんな面倒くせーこと、しなきゃなんねーの?」
「嫌か? ならばせんでもよいぞ。代わりにそこにある書の暗記をして貰うのでな……」
関羽は、厳しい目で、目の前に山のように積まれている本を示した。
「げっ」

それらの本は皆、関羽が子供の頃から愛読していた、春秋左氏伝や周経など、普通の人間には難しい本ばかり。
本を読むことはもちろん、勉強が大嫌いな藍泰は、大人しく掃除することを選ぶしかなかった。
「わーったよ。本を読むくらいなら、掃除の方がマシだ……」

関羽にほうきを手渡された藍泰は、不満な顔で文句を言った。
「ちっ。なんでこんな目に遭うんだよ〜っ。大体教室なんか、どうせすぐ汚れるじゃねーか!」
「お主が気分良く部屋で過ごせるのは、常に誰かが掃除をしておるからだぞ」
「誰かって、あんたも含まれんの?」
「もちろんだ」
「分かった、やるよ。やればいーんだろ?」
こうして、藍泰の初日のサボりは、関羽に負けて失敗した。

「ちっ……。なんで俺がこんな目に……」
ぶつぶつ文句を言いながら、藍泰は、やや乱暴に、ほうきを動かしていた。
「面倒くせーなぁ……」
藍泰は、うんざりしている。

と、その時。
「おい!」
「!?」
掃除をしていた藍泰に、張飛が声を掛けてきた。
「なんだ、藍泰。掃除中かよ」
張飛は、藍泰を覗き込む。
「おい、おめー、関羽兄貴に取っ捕まったんだって?」
「……そーだよ」
「おめーなあ……」
張飛が呆れて、頭を掻いた。
「あんま、兄貴を困らせんなよな! 大体、兄貴から逃げられるわけねーだろ。俺だって兄貴にゃ頭上がんねーんだぜ?」
「……」
「大体、兄貴はすっげー優しいし。こっちが逃げたくなるよーな男じゃねーぜ?」
「そこまでは考えてなかった」
「なんかおめー、最初はムカついたけど、放っとけねーっつーか。昨日、関羽兄貴にも言われたけど、俺と似てっからよ……。ありゃ?」

張飛は、藍泰の、包帯が巻かれた足とひじに気が付いた。
「おめー、足とひじ、どーした。怪我したんか?」
「そーだよ」
「その包帯の巻き方、兄貴がやったな。な、兄貴、優しーだろ?」
「……俺のこと、一体、やつはどう思ってんのか、さっぱり分かんねー……。怒ったくせに、怪我の手当てしやがるし。俺が出会った中じゃー、一番わけ分かんねーやつ……」
「ばっかだなー。そんなの、好きに決まってんじゃねーか」
「……」
「あんまし意地張ってっと、疲れるぜ。素直になった方がいいと思うけどなー」

その日の夕方、ようやく掃除を終わらせた藍泰を見て、関羽が褒めた。
「おお、藍泰。きちんと掃除をしたようであるな。ご苦労であった」
「ふん……」
しかし、藍泰はぶっきらぼうに、そっぽを向いた。
「お主もいろいろ大変であっただろうが、明日からは他の子供たちと仲良くするのだぞ。仲間を作ることも、学びの場では大切なことであるからな」
関羽は、笑いながら藍泰を覗き込んだが、藍泰は対照的に、関羽を睨み、怒鳴った。
「仲間? そんなの邪魔だし、ウザいだけだ!」
藍泰は、鋭い瞳で、関羽を見て、ぶっきらぼうな態度で言った。
「俺、百人敵がいても平気だぜ」
「百人の敵……?」
関羽は、驚いて、藍泰を覗き込んだ。
「そう、百人だよ。おかしーか? 俺に味方なんか、一人もいねーから。別にそれでもへーきだし!」
藍泰は、鋭く関羽を睨んだまま、続けた。
「まわりに百人敵がいたら、百人全員斬り捨てればいいんだ。信じられるのは自分だけだからな!」
そう言った藍泰の瞳は、荒みきっており、その奥底には、やや寂しさも湛えたような瞳であった。
関羽には、それがよく分かった。
「それは……。なんという悲しい考えだ。人はみな、独りでは生きていかれぬのだぞ」

関羽は、藍泰を覗き込んで、言った。
「これだけは確かだぞ。わしは、お主の味方であるからな」
「ふん、どーだか! 人付き合いほど、ウザってーもんはねーからな!」
強力な味方を得たことに気付かない藍泰であった。

その夜、関羽の邸宅の書斎では。
「なんということだ。子供が、あのように荒んだ瞳をするとは……あれは子供の瞳ではない……」
なかなか心を開かず、かたくなに周りを拒否する藍泰に、関羽は非常に心苦しい思いがした。
関羽は、いつものように、子供たちに明日教える教材を作るために、すらすらと紙面に筆を動かしていた。

そこへ、張飛がやってきた。
「おい、関羽兄貴。明日の準備中かぁ?」
関羽が、眉間にしわを寄せているため、張飛は、関羽の顔を覗き込んだ。
「おいおいどーした? なんか渋い顔だな!」
「……ああ、お前か」
「あいつかよ? 藍泰のやつ、またなんかしでかしたんか?」
「……この乱れた世だ。我々大人でも、生きるのが難しい世。子供の藍泰があのように心を閉ざしておっても、ある意味仕方あるまい」
「ま、そーだな」

張飛は、黙って考える関羽を見て、急に明るく笑った。
「ま、悩んでも始まらねーじゃん!」
「張飛……?」
「兄貴は兄貴の思ったことを、藍泰に教えりゃーいーんだよ。大丈夫だよ。兄貴なら出来るよ、俺が尊敬する男だからな。俺を更生出来たように、藍泰も更生出来るって!」
明るい張飛に、関羽は苦笑していた。
「張飛。お前は本当に更生したのか? 些(いささ)か疑問だぞ。とても更生したようには見えんがな」
「え〜、ちったあ変わってきただろ、俺も!」
張飛は、そう言いながら、腰にいつも着けている、老酒の入ったひょうたんに口を付けた。
関羽は、そんな張飛を、冷ややかな目で見た。
「まことに更生したと申すなら、その酒癖の悪さをもう少し何とかせんか!」
「ああっ、そりゃ、わりいわりい……。はははっ」
「もう少し、酒を自重せよ。わしは、お前の身体を案じて言うておるのだぞ? お前のような者が、何人もおってはたまらぬわ」

関羽は、笑いながら言った。
「不思議なものよ。お前と話をしておると、心苦しさを忘れ気持ちが和らぐ。張飛には、人を明るくする力があるな。わしにはないものだ」
「そ、そうかあ?」
張飛は、関羽に褒められ嬉しそうだ。
「兄貴は、いるだけで、俺を落ち着かせてくれるよな」
「そうだ。それで今まで、どれだけ大変な目に遭(お)うたことか。ははは……」

   

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